父のホントに信じられないくらいの回復力だった。
生きる力だ!
私たちの「在宅介護」を選択したことは、間違えではなかった。
よく食べ、たくさん会話し、よく寝た。
話し言葉もだんだんと増えて来た。
父が急に、
「今日は泊まれるのか?一緒に食事しようか。」
と突然長い文章を喋った時にはぶっ飛んだ。
暖かい春の兆しが見え始めた頃には、ベッドから立ち上がれるようになり、「よっこらしょ」を持って、少しずつ歩けるようになった。
よっこらしょとは本名は、「立ち上がり補助固定式歩行器」だが、父が歩く時に、一歩、一歩、よっこらしょ、よっこらしょ、と掛け声をかけながら進んだので、名前は、「よっこらしょ」にネーミングされた。
↓よっこらしょ
固くなった両足を少しずつ、少しずつほぐし、曲げたり、伸ばしたり、揉んだり、関節をほぐして動かすことで筋力をつけ、更に動くように、座れるように、立てるように、歩けるように導いてくれた、PTさん、 OTさんの力だと思う。
週二回だったリハビリを週三回にしてもらうという名奈に託した提案は、すんなり通った。
月、火、土の週3回の在宅リハビリの成果は、次々と成果が現れてきた。
要介護5と認定された父、確かに色々な問題も次から次へとかかえていたが。
血便、お風呂に入れない、(拭くだけで清潔が保たれているのか)など。
一つ、一つ、順を追って、焦らず、急がず、解決して行った、
そんな中で私の娘の貢献度は非常に大きい。
まだ、20代半ば、若い!なのに、子ども、自分の時間、色々な事を犠牲にしても大好きなおじいちゃんに寄り添ってくれた。
娘は昔からおじいちゃん子だった。
献身な姿はホントにいつも頭が下がる思いだ。
ベッドに寝たままシーツを替えるには、
半分ずつ行えば簡単
①横向きにして古い方のシーツを半分クルクル丸める。
②反対側に新しいシーツを敷く
③コロンと新しいシーツに移動させ向きを反対の横向きに寝かせる
④古いシーツを取り去る
⑤新しいシーツを敷く
父が自力でベッドから立ち上がるコツ
①ベッドを自動で起き上がらせ
②手すりのギリギリの位置に座らせ
③ベッドの手すりを持って立つ
(遠いと立ち上がれない)
どちらもコツを覚えればホント簡単な事なのだが、そのコツを知らないと、にっちもさっちもどうやっても父を動かせない。
OTさん、PTさんのやっている事を動画を撮ったり、観察したり、質問したりして娘が習得して、私に教えてくれた。
教えてもらった私は、
「へっ?なるほど。そうやるのか!」
と目から鱗状態だった。
娘の声のかけ方や手際が良すぎて、ケアマネジャーさんから、
「一緒に働きませんか?」
とスカウトされたくらいだ。
お風呂に入れない父を足湯を提案してくれたり、若いのに下の世話までしてくれ、足りない物があると買いに走ってくれたり、いつもおじいちゃんのhelpに対応出来るようにおじいちゃんの横に布団を敷いて、寝ていた事もあった。
父の回復は、娘、長女の長女、父の最愛の孫の力だったと言っても過言でない!
と、私は言い切れる。
他にも孫はたくさんいた。
弟の子どもは、遠地に。
早奈の子ども、名奈の子どもも二人ずついる。
だが、高校生、大学生で、青春真っ只中である。
おじいちゃん、おばあちゃんとのかかわりも縁もどんなに頑張ったとしても、一緒に過ごした時間はとても少ない。
しかも、名奈の持論が、
「自分を一番に考えなさい。
自分のことが出来ないのに、おじいちゃん、おばあちゃんの事が出来る訳がない。」
一理あるし、とても考えさせられる言葉だ。
だが、言葉を言い変えれば、
「自分の事が出来なければ、祖父祖母にかかわる必要は永遠にない!」
と言える。
人それぞれの考え方、かかわり方はあるだろう。
特に、それを否定する気も指摘する気もない。
娘には、おじいちゃんとの想い出、一緒に過ごした時間、それだけ貴重な積み重ねがある。
それは、誰にも真似できない。
長女の長女として産まれた宿命だろう。
おじいちゃん、おばあちゃんも同じ気持ちだと思う。
8人いるうちの最初の孫、最初に抱っこした赤ちゃん、特別の可愛さ、特別の感情が生じる。
母はよく娘に、
「あなたは、私の大事な宝物よ。」
と言っていた。
それは、私が初孫が可愛いと思う気持ちと同じだ。
初孫の下に可愛い双子の女の子が生まれたが、念願の女の子だし確かにめちゃくちゃ可愛い。
なのだが、何故かひいきしてるわけではないのに、1番愛おしいのは、1番最初に生まれた長男。
早奈が私をそこはかとなく妬み、
娘を実家から排除しようとする理由、
意地でも、地獄に送ってやりたいと憎む執念。
姉が姉の家族が不幸になる事を心から望んでいるのだろう。
全てのその理由の根源は、
間違いなく「嫉妬」だと思う。
早奈の度重なる攻撃には、
立ち向かえる砦が確かにあった。
その暴走を牽制する名奈と弟がいたからだ。
名奈は、早奈の双子の妹だが、比較的早奈の度を過ぎた突拍子もない妄想やこじつけ、言動に難色を示していた。
逆に例えばわたしが間違えた考え方をしていたら、正してくれる柔軟さもあった。
相変わらずキーパーソンは名奈に乗っ取られてしまっていたが、それを除けばどちらかと言うと常に公平な立場にいた。
私もモヤモヤしたがキーパーソンの事はうまく回っていたらそれでいいと思って納得していた。
さらに弟は完全に私寄りな考え方であり、大人になってからは何故なのか
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
と私に懐いていた。
それは、弟の嫁さんもお姉さんと仲良いですね。とよく言っていたほどだ。
そんな砦が、その後どんどん崩れていくことになる。
早奈は、もしかして藁人形でも使って私の家族の不幸を心から願いそこはかとなく呪っていたのかも知れない。
知らんけど。(笑)
そんな私の不幸の始まり、どんどんぬかるみにはまっていく運命と反対に、奇跡的に、自らトイレに行けるほどに父は回復していった。