人として大切なこととは?

子、孫、そして次の世代に伝えておきたい忘れてはいけない記録

第72話 3度目の警察沙汰 (後半)

名奈と早奈が実家に来て、言うだけ言ったら、そそくさと帰って行ったので、気を取り直して出かけた。

すると、お昼過ぎに何度も実家から鬼電がかかってきた。

その時期、早奈も名奈も弟も私と娘の携帯を着信拒否していた。

妹たちと連絡を取る手段は、本当にどうしても急な用事の時は名奈の家のポストに手紙を入れるか、そうでない時は、実家に手紙を書いて置いておくしかなかった。

最初は恐らく誰からかわかっていたし、両親は一緒にいるので問題ない。

だから無視していた。

すると、娘の携帯や私の携帯に何十回も電話がかかってきた。

出ると名奈からだった。

「早奈の鍵知らない?なくなったんだけど。」

という内容だった。

「知らない。」

と答えた。

嫌な予感がしたのでその日の晩ご飯はみんなで食べて帰る事にした。

今度は知らない番号から電話かかってきた。

警察官からだった。

大騒ぎになっているので実家に戻って来て下さいという指示だった。

実家に着くと警察官が沢山いた。

早奈が警察に通報したらしい。

 

朝、実家に来た時に、早奈の鍵でドアに差したままで実家に入り、取り忘れた。

その鍵を娘か私が盗ったと主張。

 

そこからは、警察官が目の前にいるのに、早奈と名奈のドナリチラシが始まった。

早奈は、

「あの女が私の家に入って家を荒らすつもりなんです!家に火をつけられます!」

と目が錯乱しかなり取り乱している。

どうやら紛失した実家の鍵の心配でなく、一緒に付いていた自分の家の鍵の心配をしているのだった。

はっきり言わせてもらうと、私は早奈の家の場所を知らない。

しかも、もしドアについたままになっていた鍵を第三者が盗んだとすれば、実家を荒らされる危惧はあるが、そこに一緒に付いていた早奈の家には到底結びつかないだろう。

そんな簡単な事も考えられない人間なのだ。

私達が出かける時には、ドアに鍵は付いていなかった。

 

早奈や名奈が、私に対し常に異常な恐怖感に煽られる正体は何なのだろう?

しかも、私が早奈の家を手に入れた鍵で荒らし、家に火をつけるような人格だと本気で思っているのだろうか?

 

早奈は警察官にまずスリッパを持ってきた。

「これを見て下さい!スリッパに画鋲を刺してます!」

次は、

倉庫から、ごそごそと掃除機を持ってきた。

「これを見て下さい!掃除機のホースに爪楊枝を刺しています!」

面白いことに、証拠の爪楊枝が外れないようにセロテープでご丁寧に固定してあった。

さらに、

「この家の物が次々に盗まれています!この女がメルカリで実家の物を売ってるんです!警察に被害届も出しています。」

どこでそんな面白い妄想が出てきたのだろうか。

真剣な顔で警察官に述べていた。

 
姉が極悪人という事を警察に訴えたかったのかなと想像する。
私と娘と両親、早奈、名奈、が別々に離され、各々が事情徴収された。
早奈は必死で警察官に、
姉が家の年金狙いだ、
2,600万円を盗んだ、
さらに、娘が祖母にお金をせびっている、
娘が実家のお金を過去に盗んでいたなど、
娘までとばっちりが飛んで必死で説明していたのが聞こえた。
 
早奈は、
「これです!姉が2,600万を盗んだ証拠をここに父が書いています!」
大事そうに小脇に抱えていた「ピンク色のバインダー」をちらつかせていた。
なんと!証拠があるとはつゆ知らず、めちゃくちゃ中身が気になったが見せてくれるわけがなかった。

私は、父がソファに座っていたので横に付いて地べたに座っていた。
父が手を出したのでずっと手を繋いで事情徴収に答えていた。
すると早奈が急に近づいてきて、
「お父さんの手を離せ!」
と怒鳴ってきた。
「え?お父さんの手のツボを押してるだけだよ。」
と私が言うと、
自分の持っていたカバンを上から下に勢いよく地面に投げつけて大声でキレた。
「だから言ってるやろー!!離せっ!」
父の手をもぎ取って、袖をめくり警官に、
「見て下さい!この女が父の手をつねったり蹴ったりしているんです!これが虐待の証拠ですっ!」
と腕を見せた。
確かに父の所どころに赤いアザみたいなのがあるのは知っていた。
恐らく、父は痒いところを異常にかきむしるので、翌日その場所が内出血になっていたのだと思う。
逆立ちしても私が、父に手を出すことはない。
こちらで大騒ぎしていると、他でも大騒ぎになっていた。
名奈が次々に実家に乗り込んでくる警察官にキレだした。
「ちょっと!もう!家に入るな!これ以上入るな!出ろっ!」
相手が警察官でも恐いものなしだ。
今度は、まさかの娘が名奈につかみかかろうとして警官に離された。
名奈が娘に何かを言ったらしい。
後で、娘からその言葉を聞いてぶったまけた。
計画妊娠!○○君(娘の旦那)大学までやめて欺されてかわいそぅ~。」
とからかったらしい。(娘は学生結婚だったので)
 
私に罵るのならわかるが、娘と何の関係があるのだろう?
 
娘と名奈を離すために、娘は外に出された。
この「計画妊娠」という言葉は、その後名奈のメモ、父のメモ、弟の発言にも何度も出てきたので、名奈が思いついた「ダメージを与える」最高級の言葉だったのだろう。
 
今度は車の中で待機していた子ども達に向かって、早奈が車のドアをバンバン叩いて脅していた。
(後で子ども達に聞いた話)
「窓を開けろ!あんたら、○○(実家の姓)と名前が違うやろ!あんたら関係ないからここに来るな!」
子ども達は恐怖で泣いていたらしい。
(後ほど孫が言っていた。「早奈ちゃんも名前が違うから来たらあかんやんね。」
ごもっともだ。)
そこへ外へ出された娘が飛んで来て、早奈の旦那さんに、
「あの人どうかして下さい!自分の嫁を制御出来ないのはどういうことですか?」
と言った。
今度は早奈の旦那さんが警察にキレたらしく、
「こんなに沢山警官がいるのに、無能すぎる!この騒ぎを何故防げないのか!」
さすがに無口な旦那さんもキレるだろう。
私達が出かけていた間に早奈が警察を呼び、何時間も警察官と揉めている間待機し、更に私達が帰宅してから数時間、合計6時間の間、ず~っと黙って外に立っていたのだから。
 
早奈の旦那さんの逆ギレで、さらに応援を呼びパトカーの列をなした。
 
近所の人が出てきて、早奈の逆上ぶりを見て、
「今、うちの子どもがTV見ているからお子さん達一緒に見ませんか?」
と親切に声をかけてくれたらしい。
 
これだけ引っかき回して大騒ぎし、
鍵の事で頭が一杯になり、鍵!鍵!とキチガイのようになっていた当の本人は、警察官の一言ですんなり謝罪もなく、みんなを置いてサッサと帰ってしまった。
 
「鍵は、防犯のため新しく作り直したらどうですか?」
 
その拍子抜けするくらいの一言だった。
早奈とは、そういう人間だ。