人として大切なこととは?

子、孫、そして次の世代に伝えておきたい忘れてはいけない記録

第20話 絶食事件 その①

父がコロナで入院。

一般病棟に移れるほど回復し、リハビリ転院による退院の選択肢を選ばず、兄弟全員の意見一致で、在宅介護を選び退院。

要介護5でぽぽ動けない父の介護を兄弟交代で始めた。

妹たちは、旦那さんの130万円の壁以内で働くパート。

私は大学卒業から同じ会社に勤める正社員。

娘は、子どもを学童に入れてランダムな日程でアルバイトで仕事をしていた。

妹たちは自分たちの都合で、

自分たちの決めた日程を、

カレンダーに書きこむ。

しかもその紙を月末ギリギリで出してくる。

 

予定が立てられない。

娘もシフトの提出期限が月末までにある。

私も仕事を急にホイホイ休めない。

と何度も頼んだが、

改善なく返事も一切なく、

平気でいつも翌月始まってから出して来た。

 

あちこち空いたカレンダーを泣く泣く、

土日祝日は必ず私が入る。

あとは私が有給を使うか、

文句一言も言わず、ほとんどの平日を快く娘が埋めてくれていた。

本当に娘には頭が上げられないほど頼ってしまった。

ひと月に私と娘が占める割合は、かなり多かったが一言も文句は言わなかった。

 

私が一番最初に在宅介護を言い出した事、

姉である責任感、

この時こそが父の回復を左右すると確信したこと、があったから。

そして、父が大好きだから。

 

1つ、1つ、パズルを解くように

難問を解くように、

解決しなければならないことが、

日々山積みだった。

 

編み物の毛糸が絡まり、

その塊をほどこうとすると、

それがまたよけいに絡まり、

ハサミを入れて、

もう、

ちょん切ってしまうしかないほど、

ぐちゃぐちゃに、

なってきた。

 

暗やみの中で、

どれだけ目を凝らしても

一向に前が見えないみたいに、

あちこちにぶつかるみたいに、

次から次へと問題が起きた。

 

その中の1つ。

大きな難問があった。

退院してしばらくすると、

父の便にねっとりとした、

多くの鮮血。

それが顕著に、

便のたびに出現した。

 

痔なのか?

痔にしては血液が多い。

 

退院以降、父は血栓を回避するため、

リクシアナを毎日服用している。

リクシアナは血液の凝固をおさえる、

つまり血液をサラサラにする薬だ。

そのせいで、腸内や内臓の傷による血液が出て来た可能性もある。

 

主治医の先生に診てもらいに行くと、専門医に診てもらって下さい。

と紹介状を書いてくれた。

 

紹介状先の病院に父を連れて行く日の担当は、

早奈だった。

 

今から思えば、

早奈が父を連れて行った時の

報告発言で、

私が早奈をかなり責めた。

その後の私の運命が、

大きく異様な形で

歪んでいく、

この事件こそが

全ての悪夢の発端だった気がする。

いや、そうだろう。

 

早奈の医師からの報告は、

内容が突拍子なく、

如何にも馬鹿げた話しだった。

生命の危険に晒されるような。

 

専門医のところに行き、

その先生から聞いた話は、

「1週間から10日間、患者を絶食させる」

だった。

えっ?

本気で言ってるのか?

耳を疑った。

絶食!?

そんなことしたら、

お父さんは体力が持たない。

せっかく「きざみ食」「軟菜食」もしっかり食べられるようになったのに。

人間は、口からしか生きるための栄養がとれないのに。

絶食はありえない。

お父さんを死なせる気?

もしも先生が言ったのなら、大問題だよね?

聞き間違いだよね?

アホか!?(これは言ってない。心の中の言葉)

 

私はよく娘に、

「お母さんは人を怒らせる言葉を吐く天才やね。」

と皮肉を言われる。

確かに自覚がある。

「相手を馬鹿にしてるの?」

と捉えられるような言い方をしてしまうことも自覚がある。

小さな頃から、白黒ハッキリさせないと気が済まない性分だった。

白か黒しか答えはないと思っていた。

要は心が尖っていた。

だが、社会人になった頃から、世の中には白黒では割り切れない事の方が多いんだ。

グレーはあちこちに存在し、

グレーは白黒よりももっと大きな顔で幅を利かせていることも、

悟った。

要は人間が丸くなった。

かなり。

 

どれだけ妹たちのシフトに不満があろうと、

夜中にぐっすり寝ている母を1時間ごと起こしてトイレに連れて行けと指示されようと、

父のおむつを1時間ごとに交換しろと命令されても一言も反論しなかった。

 

だが、この「絶食」だけは、

「はい、そうですか。そうしましょう。」

と従うわけにはいかなかった。

いや、常識で考えたらわかる話やろ?

 

早奈の(恐らく)人の話をよく聞き理解して、要約し、それをフィードバックして間違えのない正解の形で他の人に伝える能力が欠けていた。

超不得意分野が、モロに裏目に出た。

 

ただ、もしもだな。

立場が逆で、

私が間違えて聞いてきたことを報告してしまい、

「それはおかしいやろ!?」

と5歳年上の人から反論されたなら、

「もう一度確かめるね。」

と言って先生に再度確認をとる。

または、

「あれ?もしかしたら聞き間違えてた?」

と思い直し、

「ごめんなさい」

と即、平謝りするだろう。

要は人の話をよく聞く耳を持ち合わせている。

 

しかし早奈は、

絶対に自分は間違えない!

自分を確信して、

私こそが正解だ!

とハッキリと言い切るのだ。

 

そして、この事件が終わって、

一年経ってもまだ、その後でもまだ、

先生が絶食するように言った。

姉の私がズルをして、先生の話をすり替えた!

と、この事件を根に持ち、

事あるごとに(まだひつこく)言っていた。

 

↓グループLINEの早奈との会話

他の人が入れない状態。

しかも、お互いの会話は完璧なほど噛み合っていない。

本気で、30分から1時間ごとに父のおむつ交換を訴えている。

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