人として大切なこととは?

子、孫、そして次の世代に伝えておきたい忘れてはいけない記録

第39話 びしょびしょ事件

時空の歪み

--- びしょびしょ事件 ---

 

このびしょびしょ事件あたりから、じわじわと実家という場所に、時空が歪んできたのだと思う。

 

私は、本当にポッカリ空いたその時空の歪みにどんどん吸い込まれていった。

 

びしょびしょ事件!?

なんだ?それ?

と思われるかもしれないが、読んで字の如くだ。

丁度、GWが終わり、家族全員がコロナにかかりやっと完全回復の兆しが見えだしたころ、

6月も中旬になっていた。

父の回復でほっとしたのも束の間、姉が介護しているのは父の年金狙いだ、財産を吸い取っている犯人だと早奈に言われる少し前、早奈がせっせと証拠を集め出した頃だ。

 

父の容体はほんの少しずつだが回復していった。

あんなに心配していた血便もリクシアナの飲用をやめたら出なくなった。

父は昼間は自力でトイレに行ったり、杖をつけばかなり歩けるようになった。

会話もはずみ、お得意のダジャレが冴えていた。

ベッドから起き上がるには、介助が必要だったので夜はオムツをつけて寝てもらった。

母は、自分のことで精一杯なのであまり父の介護はしなかったし、母がやるとけっこうな確率で間違った使い方をしていた。

オムツシーツが裏向きだったり、オムツが常に裏向きだったり、洗濯機の中がちぎれた紙オムツの残骸だらけになっていたり、一生懸命にやってくれているが、結局こっそりやり直しが必要だった。

3姉妹のシフトは、平日が早奈、名奈、土日祝日が私だった。

月曜日 名奈 (訪問リハビリPTさん)

火曜日 早奈 (訪問リハビリOTさん)

水曜日 名奈(両親デイサービス)

木曜日 早奈 or 娘

金曜日 早奈 or 娘 (父親のみデイサービス)

土曜日 私

日曜日 私

私は、金曜日の夜、出勤帰りから月曜日の朝出勤時まで泊まりだった。

 

早奈の指示が出た。

子どものおねしょも同じだ、私はこうして子どもを育てた堂々と言う。

夜中1時間ごとに父親を起こしてトイレにつれて行くこと。

② トイレに行った時間を手帳に記録すること。

本当に早奈は毎時1時間のトイレの記録を付けだした。

姉もこうしろ!と言わんばかりに電話の横にその手帳が置いてあった。

自分は夜中何度もトイレに行くので、「自分のタイミング」で父を起こしてトイレに連れていくから全く苦ではない!という自分勝手なぶったまげた理論である。

 

実はこの時期当たりから、名奈も早奈寄りの意見が多くなっていた。

トイレ1時間ごと誘導論は名奈も全く同意見だった。

 

私はその指示を完全否定した。

指示通りきっちり守っていたら、恐らく介護している側が倒れてしまうだろう。

 

父の起きたタイミングでなく、毎回私の起きたタイミングで、しかも1時間ごとに父を起こす。

 

そんなの睡眠とれないやん!

お父さんも私もゆっくり寝られないやん!

そんなに、寝ている間におしっこが漏れることが許せないのだろうか。

一体、何がしたいのかわからなかった。

ましてや、他の利用者さんもいるデイケアにも指示を出した。

父だけ1時間ごとにトイレにつれて行けなんて私の考えではありえなかった。

 

ところが早奈は、仕事中に立ったまま寝てしまうという失態をしてしまい、結局そのやり方はどこかに消えてしまった。

 

今度は金曜日の夜実家に行くと、18時には電気を真っ暗にして、もう布団で寝かされていた両親。

オムツを2重、パットを3枚又に挟んで寝ていた。

 

早奈も名奈もいつも数字で言うと、1でなければ100しかない。

 

本当は、11も23も54も小数点も数字は沢山あるのに、方法は色々あっても、何故、物事に対し極端な1か100の思考しかないのだろうか。

 

ある朝、私は寝過ごしそうになり急いで仕事に出かけたのと、父がぐっすり寝ていたため起こすのは可哀想だと思ったのもあり、朝オムツを替えずに出勤してしまった。

月曜日の朝は名奈がやってくる。

名奈が来た時には、オムツから尿が漏れてシーツがびしょびしょに濡れていたらしい。

確かに、夜中12時ごろに父が起きて、

「トイレに行きたい!」

と言った時に、結局はもう用が済んだ後だったのでオムツ交換した。

ちなみに母はスヤスヤ睡眠中だった。

それからは、確かに交換していない。

 

ただ、私もハッキリ言うと介護に関して完璧ではない。

失敗もあるし、早奈や名奈が言うように1時間ごとにトイレ誘導したり、父に強制的に二重オムツに3枚パットなんて出来ない。

絶対蒸れるやん!

多少、漏れてもいいやん!

しっかり寝られる方が大切じゃないの?

とも思った。

 

しかし、このびしょびしょのことを、生涯ずっと言い続けたる!の如く二人からことあるごとに責められた。

しっかりおしめシーツを敷いているので、布団には漏れることがないはずなのに布団がびしょびしょで、下のマットまで濡れていたと言われた。

 

さらに翌週の土曜の朝、早奈と名奈が実家にやってきた。

来るなり、

「なぁ、名奈!この前布団がビショビショやってんな!

 それってどういうこと?えっ!!?信じられなーい。

 まさか、1時間ごとにトイレに行かせてなかったん?

 お父さんのオムツをちゃんと替えてなかったん?わぁ~やっば~マジ?!」

と勝ち誇ったように早奈が大声で言った。

ん?

一体何の用事で来たのだろう?

と黙って下を向いて無視していた。

すると、そのビショビショ事件の事を7~8回ほど少し言い方のバージョンを変えて、繰り返して言った。

私は、確かにもしも布団が濡れていたのなら、名奈に悪かったなと思ったので、黙って奥の部屋で父と小さくなって聞いていた。

絶対に反論はしなかった。

少しでも反論したときの早奈の反撃が目に見えるようだったからだ。

何度も言ってやっと諦めたのか、私が反論しないので拍子抜けしたのか。

「なぁ、名奈!明日は近鉄にお買い物一緒に行こう。で、二人でランチでもするぅ?」

と言って実家から出て行った。

本当に何しに来たのか、それだけ言いに?と妙に笑えた。

 

その時、父がボソリとつぶやいた。

「あの双子は、いい気になってのさばってるな・・・」

と。

父は二人の言っている意味がわかって聞いていないと思っていたので、

父の言葉に私がビックリした。

 

↓ 名奈と私の会話。グループLINEだが誰も会話に入れない。

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