人として大切なこととは?

子、孫、そして次の世代に伝えておきたい忘れてはいけない記録

第22話 大腸検査当日の大悲劇

検査日を決めるために、父は行かなくてもいいということで、名奈が担当の日に大きな病院へ説明を聞きに行った。

 

大腸内視鏡検査とは?

直径1cm位のスコープを肛門から入れて大腸の一番奥まで挿入し、引き抜きながら大腸の中にポリープ、がん、炎症などの病気がないかを直接見ながら観察する検査である。

 

私も妹達もこの検査を受けたことがない。

段取りがわかるわけがない。

前日に食べる3食分の食品セットを買わされた。

前日はそれを食べるらしい。

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前日は私が実家担当の日だった。

お父さんに3食のクリアスルーなるものを、食べてもらった。

 

次の日の検査当日担当は、早奈だった。

前日のギリギリになってドタキャン!

私は行きません宣言!

急に休むなんて、絶対無理な話。

 

だが…。

私が休むしか方法がなかった。

早奈の理不尽さは、今に始まったことではなかったので、私も気持ちを切り替え、会社に当日急な休暇を出した。

 

前日から実家に泊まっていたので、朝4時半から経口腸管洗浄剤(下剤)を少しずつ数回分けて飲む。

全部で2リットルもある。

なだめて、なだめて少しずつ少しずつコップに分けて飲ませるのに、めちゃくちゃ苦労した。

学校と仕事に行く前に孫と娘が心配で見に来てくれた。

孫の声援で、また少し飲めた。

孫3人も娘も遅刻寸前までおじいちゃんについて、手を握りしめて、

「頑張れ!頑張れ!」

と応援してくれた。

いつもの介護タクシーの運転手さんが来た。

母は嫌がったが、家の中に車椅子を入れ父を乗せ、玄関を出て、後ろ向きに一段、一段と車椅子で階段を降ろす。

正に神技でしかない。

素人には絶対に出来ない。

母も1人で家にいるのは危ないので一緒に行った。

真面目な私は、検査を受けるまでに2リットル飲まさないといけない使命があり、タクシーの中でも少し父に飲ませた。

 

病院に着いた。

看護師さんには、

着いてすぐに、

父が要介護5であること、

車椅子にずっと座っていられないこと、

洗浄剤を飲んでいるが、

自力でトイレに行けないこと、

何度も何度も伝えた。

 

ずっと待たされた。

お父さんも疲れている。

「帰りたい」

「しんどい」

と何度も訴えていた。

気を紛らすために、

話しかけたり、

車椅子でぐるぐると病院の中を周ったり、

あの手この手を使った。

看護師さんには、

またか、みたいな顔されて

嫌がられるほど、

10回以上、父の状況を話して、

車椅子で待てないので、

ベッドに寝かせてほしい。

と伝えた。

オムツも替えていない。

限界だからと切実に伝えた。

忙しいのか、答えはいつも、

「もう少し待って下さい」

だった。

 

病院なんだから、

ベッドくらいあるはずなのに。

少しイラッとした。

 

病院に到着してから、

2時間半ほどしてやっと、

診察室に通された。

 

洗浄剤も残り少なくなった。

父は疲れ果てて、ヘロヘロになっていた。

 

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ホント。

よく考えたらわかるはず。

父は自力でトイレに行けません。

長時間車椅子に座れません。

車椅子からずり落ちます。

そんな患者が下剤を飲んだらどうなるのか?

ただ、私自身も検査手順を完全に熟知している訳ではなかった。

先生の指示のとおり、2リットルの洗浄剤を全て飲ませただけ。

 

健常者は、2リットルの下剤を飲み干し、病院のトイレで腸の中が空っぽになるまで、出し切る。

そのマニュアルは、要介護5の高齢者には、適用しないのじゃないか?

 

だが、父は自力でトイレに行けない。

オムツ状態で下剤を2リットル飲んだ。

 

車椅子から診察台に乗りかえて、

すぐのこと、

父のズボンを少しずらした時に、

それは起こった。

メントスをコーラに入れた時みたいに、

プッシャー‼️

と勢いよく、

よくこれだけお腹に入っていたな。

と、びっくりするほど大量の

腸内の物が出てきた。

それは、診察台から床にしたたり、

波の様に溢れてきて、

海になった。

慌てた看護師さんは、

紙タオルや拭けるもので、

掃除したが間に合わないほど。

溢れに溢れた。

 

診察室に先生が来た。

「大変なことになったね」

「とりあえず検査できるか診てみましょう」

と父は検査室へ。

 

私は、父のズボン、パンツをトイレに洗いに行った。

汚れに汚れまくっていたが、なんか悔しくて洗いに行った。

ホントは洗面所で洗うなんていけないはずだけど、悔しくて洗面所でわざと洗った。

父は、代わりに病院の部屋着を借りた。

 

また、何時間も待たされた挙げ句、

結果は看護師さんからだった。

 

「大腸スコープを入れましたが、まだ腸の中が洗浄されておらず、検査出来ませんでした。お帰り下さい。料金もかかりません。」

 

へ?

それだけ?

あんなに指示通りに、お父さん頑張って飲んだのに?

看護師を目の前にして、

「あれだけ何度も父の状況を訴えましたよね。トイレに自分で行けないって。

父は、頑張って2リットルもの下剤を飲んだのに?

それだけ…。

一体、私はこれからどうしたらいいの?」

と涙がポロポロ次から次へと流れ出てきた。

 

この看護師さんは、私が2時間待ちの間に、何度もベッドに寝かせてほしいと訴えていた看護師さんだった。

 

「先生に聞いてくるので、少しお待ちください」

と言われ、

その後に先生に呼び出された。

「本当に色々な意味でごめんなさい。謝ります。お父さんの86歳と言う年齢、要介護5ということも考えたら、検査すべきでなかった。

もしも、腸内スコープでうまく調べられて、悪性のポリープが見つかったとしても、高齢なので手術することもない。手術は勧めません。」

これを聞いて、

また、涙がポロポロ出てきた。

先生は何度も何度も謝ってくれた。

先生の指示は、リクシアナの服用をやめましょう。

とのことだった。

 

リクシアナの服用をやめてから、父の血便は嘘の様になくなった。

 

↓父は言葉数が少なかったが、名奈や早奈の事を

「この女!台風!帰れ!おばけ!」

と言っていたが、私も娘もそんな言葉を

投げかけられたことは一度もない。

 

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