人として大切なこととは?

子、孫、そして次の世代に伝えておきたい忘れてはいけない記録

第61話 母の断捨離

猛暑の夏だった。

たとえ部屋の中にいたとしても、まめな水分補給とクーラーの部屋にいないと熱中症にかかる心配がある。

父もようやく自立してベッドからは自分で起き上がれ、よっこらしょで歩いたり、壁を伝って歩いたり出来るようになっていた。

よく食べ、よく笑い、介護がまだまだ必要だがだいぶ回復してきていた。

早奈、名奈は朝パンを持って来て、昼ご飯を冷蔵庫に置いて昼間帰って、夕方来て晩ご飯、お風呂、就寝させて17時迄に帰宅するような日々を送っていた。

私は、金曜日に職場から実家に直行し、土日を過ごして、月曜日の朝実家から会社に行く。

土日泊で両親と一緒に暮らすスタイルだった。

そんな時期、母は同じ事を毎日何度も繰り返していた。


①「父が過去に浮気をした(疑惑)だから私は介護を絶対にしない。」

(真実はわからない。父の世話をするのが嫌だから都合のいい逃げだと私は思ったが、同じ内容を毎日何度も言っていた。)

飽きたのか忘れたのかそのうち言わなくなった。

 

②「孫にあげたかったダイヤの指輪探し」

だった。

ダイヤの指輪がなくなった。長女の子ども(私の娘)にあげようと思っていたのにどこかにやってしまった。

と、毎日押し入れを開けたり閉めたり中の物を出したり入れたりして指輪探しをしていた。

そのうち忘れたのか全く言わなくなった。

 

③「断捨離しなくちゃいけない。」

「あなた、ちょっと2階のあなたの部屋をどうにかしてちょうだい」

が父に対する毎日の日課のような口癖になった。

父が自力で2階に行けないのを知っているのに必ず父に言った。

 

この断捨離には、2つ意味があった。

一つは、外に出かけようと誘うと、

「私は行けないわ」

と言う理由が「断捨離」にあった。

 

もう一つは、父に呼ばれるのが嫌だからである。

身体が不自由な父は、ことあるごとに

「〇〇て。(○○は嫁の名前)」

と呼んでいた。

 

例えば、トイレ、新聞、靴下、着替え、など手伝ってほしいと必ず嫁の名前を呼ぶ。

ところが、母は父に呼ばれるのが面倒くさかったようだ。

私が父に付きっきりの時でも、母は椅子に座ったまま一歩も動かなかった。

 

そのうち2階に上がってしまい、1日の大半を2階で過ごす。

耳が遠い母が2階に上がるのは父の声が聞こえない絶好の場所だった。

 

たいがい、パターンが決まっていた。

2階の奥の和室に座り込んで衣装ケースを出す。

その中の物を、次々と出しては右から左へ分類する。

そして、いつの間にか居眠りする。

時間が経つとその中身を衣装ケースにしまう。

捨てた物は?ない。(笑)

母がやりたい事を取り上げしまうのも酷なので、黙っていた。

ある日、断捨離を見学しに行った。

「これまだ使えるし、いいわよ。」

「これどう?孫ちゃんに。」

 

と言われた、中の物をみて絶句した。

 

どれもこれも早奈の子どもの名前がデカデカと油性のマジックで書かれたお古の山だった。

服だけでなく、干からびて出ない使い差しの絵の具セット、ペシャンコの書道セット、記名いりの汚れたハンカチ、洗濯しすぎてボロボロぺったんこのミニタオル、記名いりの巾着の山、黄色くなったシャツ、干からびたかばん、くしゃくしゃの帽子、ガラクタが溢れ出てきた。

 

母は、

「早奈ちゃんがあなたの孫達のためにわざわざ持ってきてくれているのよ。」

と見せてくれた。

 

自分の家の不要品を処分せずに大量に実家に持ってきていたのだ。

その和室の向かいの部屋も、(旧早奈の部屋)一部屋占領して、自分ちの物を持ち運んでいる。

 

人に物をあげるときはせめて、

① 新品未使用のもの

② 人のために買ってきたプレゼント

③ 記名のない洗濯済みのブランドの服

くらいだろう。

 

メゾピアノミキハウス、ベビードール、 エンジェルブルー、ヒステリックミニなど娘が数回しか着ていない新品同様の服は、妹の子ども用にあげたことがあった。

妹の子どもは洋服を取り合いっこしていたので妹たちもそのことは覚えていると思う。

 

はっきり言ってゾッとした。

自分達が履いて使い古した、毛玉の付いたぶよぶよになった靴下や、どう見ても誰が着るねん!とツッコミたくなるような色の服をたくさん実家に持ってきていた。

実際に母は早奈の子どものお古ジャージやパジャマを数点着ていた。

ま、悪いとは言わないが名奈も私も親にそんな失礼なことはしない。

 

自分の家で処分すればいいのに・・・。

 

母には悪いが、

「ちょっとさすがにこんなの要らんわ。ゴミやん!汚れてるやん。ゴミゴミ!!!」

と冷たく言ったら、

「せっかくの早奈の好意を」

と機嫌が悪くなった。

 

台所には、大量の紙袋が置いてあった。

持ってきたのは早奈だ。

たまたま荷物が多くて困っていると、母がこれに入れなさいと持ってきた紙袋を開けると、大量のホコリと髪の毛がいっぱい入っていて、ゾッとしたこともある。

結局、母の断捨離は父から逃げるための手段でしかなかった。

しかし、この断捨離のせいで、私は仕事を休んで実家に戻る羽目になった。

 

↓  倉庫を開けるとメモがありビックリ!

時代のニーズに合ってない、かび臭い倉庫の中にあるバッグ?

箱さえ開けたくもない。

逆にブランド物なら自分でも数点なら持っている。

LOUIS  VUITTON、CHANEL、ROLEXの時計など。

自分へのご褒美に買った物だ。

 

こんなことを書く早奈に同情してしまう。

この品々を盗んで私がメルカリで売っていると本当に必死に警官に告げていたのだから、信じられない。(録音あり)

 

 

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